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2013320 

聖イグナチオ学院奨学金プログラムのご報告とお願い 


                                                                                       聖イグナチオ学院基金(現地世話人)
                          浦 善孝 (カトリック・イエズス会)


 皆様より「奨学金プロジェクト」にご協力を頂きましたこと、心よりお礼申し上げます。ありがとうございます。この基金を設立して1年が経ちますので、ご寄付をしてくださった方に基金の状況についてご報告させていただきます。

 「奨学金プログラム」では、当初各学年10名程度に奨学金を支給する計画を立てておりました。そして、2013115日に聖イグナチオ学院が開校し、83名の生徒が入学してきました。こちらでは、一年間の学費150ドルを、年3回の分割払いとして各学期に50ドルずつ支払います。入学してきた生徒たちは、最初の50ドルは全員支払いました。奨学金については、条件が整い準備ができ次第支給を開始する予定にしています(下記参照)。今年度は、まだ全学年(中高6年と教育大学4年)の生徒が揃っていないこともあり、今年度いただいたご寄付をすべて今年度入学した生徒に支給することはできません。同時に一旦支給を始めると、6年間か10年間支給を続けなげればならず、将来のために資金を確保しておく必要もあります。したがってある方のご寄付は、次年度以降に生徒に支給させていただくことになりますので、ご了承をお願いいたします。ご寄付を使わせていただいた際には、ご連絡を差し上げます。

 また、下記にあるように、東ティモールの現地に赴き実際に社会や教育の現実を見聞きして、当初計画していた聖イグナチオ学院基金の性格や運用方法を修正する必要があることが分かってまいりましたので、ご報告とお願いをいたします。

1.報告 (会計報告は東ティモールからのニュースレターをご覧ください)

東ティモールの就学率 (2010年センサス)

小学校 70.6%(都市部80.2% 農村部67.4%) 中学校 23.0%(都市部40.4% 農村部17.1%

高校  16.1%(都市部30.0% 農村部9.1%


東ティモールの識字率 テトゥン語 (2010年センサス)

男女全体  56.1%(都市部80.9% 農村部44.6%

男性全体  61.3%(都市部83.4% 農村部50.3%) 女性全体(78.0% 農村部39.1% 

受験者数が思ったほど多くなかった

 東ティモールに赴任する前には、奨学金が支給されれば子どもたちの中等教育(中学校と高校)への進学が可能になると考えていましたが、現地の実情はそれとは異なっていました。親が子どもたちの教育の必要性を日本と同様には感じていないこと、子どもたちが労働力でもあることも理由として挙げられます。すなわち、「学校を設立し、学費が支給されれば、子どもを学    校で学ばせる」という考えは、こちらでは一般的ではないということです。また聖イグナチオ学院がある農漁村地域では、学校設立の情報が充分に伝わらなかったことが指摘されています。国内郵便制度がなく、インターネットも皆無に近く、新聞・テレビにはごく一部の人々だけがアクセスできる状況では、口伝えで学校のことを広めてゆくか、一旦開校して現に知ってもらうことしか、人びとに学校のことを伝える手段はありません。さらに、もし、小学校への就学ということでしたら、「誰でも学校に行きたい」ということになるでしょうが、「中等教育」となるとハードルが高くなるようです。

奨学金支給者選定の困難さ

東ティモールへの渡航前に「教育里親制度」を創設することを計画し皆様にご協力をお願いいたしましたが
在この奨学金プログラムの運営方法について再考しています。主な理由と結論は下記にある通りです。

①当地では、個人的に奨学金を支給したり受け取ることに心情的に難色を示す人びとがいます。「お金を個人的に受け取って勉強できることを、子どもたちに知られたくない」という気持ちです。

②代わりに、学校全体に寄付をしていただき学費をなるべく低く抑える、「生徒全員に対して奨学金を支給する」というイメージで奨学金を支給できないかというシステムが提案されています。

③支給者選定の難しさも理由に加えられます。納税証明書や所得証明書のようなものがないので、入学前に予めどのような基準で生徒を選べばよいか、選定のプロセスを確立するには困難が伴うということです。親類や友人関係を含めた人間関係が極めて重要な当地において、学校で働く東ティモール人の中から選定にあたって「きっと多くの不満が寄せられる」という危惧が寄せられました。

④奨学金支給者(団体)が活動地域のよく知った家庭の少数の子どもたちに活動団体とは別の学校へ行くために、入学試験合格後、奨学金の支給開始するのと異なり、学校自体が長期間にわたり多くの生徒に奨学金を支給する場合、上記①や③のような人の思いや人間関係がある中で、合格者の発表と奨学金支給者の選定を同時に行うには困難があると考えられます。

⑤【結論】現在は、入学後1学期間が過ぎてから、経済的なサポートが必要な生徒に奨学金を支給する方向で、検討をしています。家庭からの申し出だけではなく、教員が服装や弁当のようすも見て、学校の方から奨学金の支給を提案することも考えられており、いま教員はその点も含めて生徒のようすを見ています。そのためには、学校入学のために受験料10ドルと一学期分の学費50ドルを支払えることが条件になりますが、それは家庭の子どもを学校に通わせたいという意思表示になると考えられています。一方で、入学後にサポートを開始すれば、当地の実状を鑑みるとそのシステムのうわさが広がり、入学を希望する生徒が徐々に増えて来ることが予想されます。

2.お願い

 聖イグナチオ学院奨学金プログラムでは、「教育里親」の形で募金をお願いし奨学金を支給することを当初計画しましたが、学校の実状に鑑みて、生徒のための机や椅子、教材購入(教科書コピーや体育用具購入等)、図書館の書籍購入などに利用させていただき、「全生徒への奨学金」としても利用させて頂ければ幸いと存じます。(現在年間学校運営費の10%強のみが学費収入となっています。)一方で、これから生徒が増えて来るに従って、個人的に奨学金を支給してゆく「教育里親」制度も並行して必要になってくるのは確実です。つきましては、「奨学金プログラム」の意向で寄付したけれども、上記にあるような学校家具や教材購入に利用してもよいとお考えの方がいらっしゃいましたら、大変お手数ですが下記の浦宛に連絡いただけますようにお願い申し上げます(ご連絡がない場合は、当初のご意向通り「奨学金プログラム」として個人的に生徒へ支給いたします)。今後も、皆さまからのご厚意を頂きながら聖イグナチオ学院基金を運営してゆく所存です。長い道のりになると思いますが、当地の学校と基金についてご理解とご協力を頂けますようにお願い申し上げます。

連絡先                                                                 

Fr. Yoshitaka Ura, S.J.                                        住所は切り取り封筒やハガキ    
Residência Santo Inácio de Loyola                         に貼り宛名として使えます。
Taibesi, Cinarate, Dili                                                郵便局窓口で投函できます。
Timor Leste  P.O.Box 209 

tel. +67077005877(日本との時差はありません)   e-mail: urasj@jesuits.or.jp


この「ご報告とお願い」は、ご寄付をいただいた方々にはすでに郵便で発送させていただきました。

上記のような事情もございますが、生徒個人の就学支援を実現するために、引き続き奨学金プログラムにもご協力いただけますようにお願いいたします。