東ティモールからのニュース・レター
The News Letter from East Timor, No.3　2013年10月5日
Residência Santo Inácio de Loyola
Taibesi, Cinarate, Dili, P.O.Box 209, East Timor　tel. +670-7700-5866  e-mail: urasj@jesuits.or.jp

聖イグナチオ学院基金　現地世話人
浦　善孝 

 

東ティモールの新しい学校設立の協力者のみなさまへ
－聖イグナチオ学院（中学高等学校）・聖ヨハネ・ブリトー学院（教育大学）－
 

　東ティモールに赴任して、1年半が過ぎようとしています。

　次第にこちらの生活にも慣れてきました。この10月初めには、これまで住んでいた首都ディリのイエズス会修道院から、聖イグナチオ学院があるリキサ県カサイ村の小さな修道院へ引っ越しました。ディリから約18Km西に位置する海辺の小さな集落です。ブログ＜ワニ通信＞では、すでにカサイ村のようすを少しずつ紹介しはじめました（＜東ティモール　ワニ通信＞で検索できます）。次号のニュースレターでは、学校所在地のカサイ村のようすをお伝えしようと思っています。　

　聖イグナチオ中学高等学校は、この10月で1年間の学校年度を終えようとしています（今年1月15日に開校しましたが、東ティモールの学校年度は政府の教育政策で今年は10月中旬で終わりになります）。長い伝統を持つ学校に比べ、私たちの学校はやっと創立1年を終えようとしているところです。学校の先生方は、かつてカトリック・ディリ大司教区よりイエズス会が運営を委託されていたディリ市内の聖ヨゼフ学園（2013年10月5日閉校）で働いていた方がたで、新しい学校に移って来られました。そのために、すでにイエズス会学校での教育の経験があり、スムーズに教科指導や生徒指導を始めることができています。これらの先生方は、開校前には4カ月間フィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学へ出向き、教育学や英語の研修にも臨みました。

　生徒たちは、毎日元気に学校にやってきます。携帯電話やコンピューターゲーム、インターネットが普及していない当地では、子どもたちの生活は学校が中心です。よく寝ているのか、授業中に眠たそうにする生徒は「今のところ」いません。私は「宗教・道徳科」の授業を担当しており、彼らのノートや試験を見たり読んだりしますが、生徒たちのいわゆる「人間としての感性」や「理解力」というものは、日本の同年齢の生徒たちと同じだと感じています。「宗教・道徳科」は生徒の気持ちに何かを問いかける営みですが、何が、どんな時に、「よいか」「わるいか」「うれしいか」「かなしいか」などは、日本の生徒とも似ています。こちらの生徒と日本の生徒が持つ「感性」が同じようであれば、「数学」「理科」「英語」などの他教科を理解し学習する能力についても同じように持ち合わせていると思われます。すなわち、「数学」「理科」「英語」などの教科を学ぶ機会があれは、東ティモールの子どもたちも学力を身につけて行くことができるということです。

　学校の卒業資格や学歴が国内のみならず、国際関係間の、集団としての国家の「政治力」や「経済力」に反映される現状にあって、それらを公正な関係にし、相互に人間の尊厳を尊重し合えるような関係にするためにも、すべての子どもたちに「よい教育を受ける機会」を提供する企ては意義のあることだと思われます。しかしながら、聖イグナチオ学院はイエズス会学校として、卒業生が学歴を身につけ社会の主流となることを目指す教育を行っているのではなく、彼ら・彼女らが、キリスト教ヒューマニズムに基づいたリベラル・アーツを習得し見識を深め、自らと、社会をより良い方向へ解放していゆく担い手になる教育を行うことを目指しています。もうすぐ2期生が入学してきますが（2014年1月）、当地で始まった教育を通しての子どもたちと社会への奉仕が実を結ぶことがきるように、今後ともご理解とご協力を賜れますようにお願い申し上げます。なお、高等学校の教員を養成する聖ヨハネ・ブリトー教育大学につきましては、この8月に東ティモール政府に開学申請書を提出し、審査が始まったところです。2015年1月、開学を目指しています。 

■ ご寄付の経過報告（概略です）■　自由な意向で頂いた$40,496.56（3,735,718円）は、建築基金（$36,456.86）、職員室の机購入（$525.00）、コンテナ輸送費（$3,514.70／意向ご指定）に支出いたしました。奨学金のご意向で頂きましたが、学校運営経費へ変更を承認していただいたUS$30,312.00は、イエズス会東ティモール地区会計室へ送金し管理を委託しています。その内、$1,749.60は教科書購入費(追加購入準備中)、$2,445.00は身分証明書作成機のために支出いたしました。奨学金プログラム他のご意向のご寄付2,829,493円は、支給開始まで日本の聖イグナチオ基金の口座に保留しています。