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東ティモールからのニュース・レター
   Lafaek  Correspondence

The News Letter from East Timor, No.7 20151215
Residência Santo Inácio de Loyola

Taibesi, Cinarate, Dili, P.O.Box 209, East Timor tel. +670-7700-5866  e-mail: urasj@jesuits.or.jp


                                              聖イグナチオ学院基金
                                               現地世話人 浦 善孝


          
     東ティモールの新しい学校設立の協力者のみなさまへ
           -聖イグナチオ学院(中学高等学校)・聖ヨハネ・ブリトー教育大学-


 
 南洋の島から、クリスマスと新年のお慶びを申し上げます。
 早いもので、東ティモールの聖イグナチオ学院も2013年1月の開校から3年が経ち、この12月20日(日)に初めての中学校卒業式が行われます。そして、2016年1月から高校を開校し、今年卒業する76名の1期生と高校からの編入生25名が聖イグナチオ学院の高校へ入学する予定です。合わせて来年1月からは、新中学1年生も入学して来ます。新中学1年生は109名が入学予定ですが、73名が女子で女子の制服が足りず(60名分しか準備していなかったため)急遽インドネシアに追加発注しています。来年からは全校生徒約420名、教職員35名になります。

 聖イグナチオ学院では、今年の6月からウルメラ・プロジェクトを開始しました。本校は東ティモールのリキサ県ウルメラ村(首都ディリから20Kmほど西に位置する)に所在しますが、村からの入学生増加を目的としたプログラムです。設立当初から本校では、「貧富の隔たり無く、学びたいすべての子どもたちに良い教育を提供できるきちんとした学校」の東ティモールにおけるパイロットスクールを創ることを目指していました(inclusive education)。しかしながら、首都ディリからの入学希望者増加に伴いウルメラ村からの入学者が減少してゆきました。様々な原因が考えられますが、都市部の家庭の方が教育熱心で結果的に入学試験で都市部から受験する生徒の方が高得点で入学しやすくなること、学校所在地の村の家庭が貧しくて学費を払えないこと、村の親たちが教育に関心がないことなどが考えられました。そこで「ウルメラ・プロジェクト」と称し、村の公立小学校で学校説明会を開き、この6月から入学試験がある9月末までの月曜日から土曜日まで毎日小学6年生を集め「進学塾」を開きました。18名が受験しましたが最終的に11名を合格としました(加えて他に2名が高校に合格)。1次の学力試験では合格最低点をかなり下回っても合格としましたが、2次試験の面接ではほとんどの生徒が問題なくパスしました。さらに、「ウルメラ・プロジェクト」は合格した生徒たちの中で奨学金がなければ入学できない生徒には奨学金も支給します。現在合格者11名中7名の家庭が「奨学金がなければ学校にやれない」と言っており、奨学金の申請をしています。

 それだけではなく、「ウルメラ・プロジェクト」では合格が決まってからも合格者を毎日集めて、約2時間ポルトガル語と算数の授業をしています。合格最低点を下回っても合格としたため、1月からの新学年について行けるようにするためです。私も小学6年生にポルトガル語を教えていますが、日本から来られたボランティアの方も算数を上手に教えて彼ら彼女らの学ぶ意欲を駆り立ててくださいました。また、来年高校に進学予定の本校の中学3年生が、マンツーマンで村の小学6年生たちに教えています。これまで、宿題をした経験がない小学6年生たちは毎日宿題をしてくることを求められていますが、村の子どもたちが家庭での学習習慣をつけることもウルメラ・プロジェクトの目的の一つです。そしてこの12月の終わりに、もう一度入学試験と同じ問題に挑戦して、どれほど得点が上がったかをチェックする予定です。当初、ディリからやってくる中学3年生と村の新入生が上手くやってゆけるか心配でしたが、予想以上に効果が上がり上手くいっているようです。

 いま、村の家庭からの「奨学金申請」を受け付けていますが、思いもつかなかったことに直面しています。子どもの親たちが字が書けなかったり、申請書に添付する村役場や教会からの推薦状をもらう方法を知らなかったり、提出期限を守るという意識がなかったりすることです(学校が求める手続きが難しすぎる?)。さらには「決められた日に入学手続きを行なう」ことをそんなに大切なことだと思ってなかったりすることです。入学手続金10ドル(1200円)が払えなくて入学はしないという村の生徒が5人もいましたが、免除するということを伝えると公立小学校の教頭先生がバイクの後ろに生徒たちを乗せて手続きをさせにやって来ました。もう一つの予想外(想定内でもありますが)のことは、東ティモールの中で相対的に(少しだけ)豊かで学力のある子どもを持つ家庭から、「ウルメラ・プロジェクトは不公平だ」という声が聞こえて来ることです。しかし、これらのことに挑戦してゆくことが新しい学校を創ることだと思いながら、村の子どもたちの家を家庭訪問しています。

*Lafaek Correspondence とは「ワニ通信」という意味です(Lafaekはワニです)