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201521

 

聖イグナチオ学院基金 ご協力のお願い


 
                          現地世話人 東ティモール 聖イグナチオ学院
                                       浦  善 孝 (カトリック・イエズス会)



東ティモールについて

 カトリック・イエズス会は、中国、アフリカ、ミャンマー、JRS(イエズス会難民サービス)等における奉仕活動とならんで、東ティモールでの活動も優先課題の一つとしています。東ティモールはオーストラリアの北に位置する人口約120万人、岩手県とほぼ同じ面積の、20025月に独立した小国です。同国は16世紀半ばからのポルトガルの植民地時代と、第二次世界大戦中の3年間の日本軍による占領時代を経て、1975年のポルトガル撤退後1976年にインドネシアに併合されました。すでに独立の機運がありましたがインドネシア統治時代には同化政策がとられました。その後国連の仲介によりインドネシア政府とポルトガル政府の合意のもと1999年にインドネシアからの分離独立を諮る住民投票が実施された結果、東ティモールの独立が決まりました。しかし、インドネシア軍撤退の際には、破壊活動や強制的な西ティモールへの住民移住が行われました。そのために1975年以降、多くの難民と20万人近い死者、行方不明者が発生したといわれています。21世紀初の独立国となった東ティモールは、政情は安定してきましたが住民の生活はなかなか向上しないのが実情です。このような状況の中で、若者(19歳以下の若者が人口全体の52.4%を占めています。2010年)と社会のために質の高い中等教育が待望されています。
 

聖イグナチオ学院基金 設立経緯

 20098月に福岡で6日間にわたって開催された東アジア太平洋地区のイエズス会学校ワークショップでは、東ティモールの新しい学校設立を各国のイエズス会学校がいかに支援するかということがテーマとなりました。そのワークショップの中で、日本からの会議参加者(イエズス会四校と言われる、栄光学園中学高等学校、六甲中学高等学校、広島学院中学高等学校、上智福岡中学高等学校(泰星学園)の理事長、校長とイエズス会教育推進の担当教員)たちは、日本の4つのイエズス会学校は各校で募金活動をして東ティモールの新しい学校の生徒たちに奨学金を送ろうというアイデアを提案し、実現へ向けて動き始めました。この運動には、「人から人へ」顔の見える交流にしたいとの思いが込められています。同時に、私たちも東ティモールの人びととの交流から多くを学ぶことができるだろう、ということも考えました。これが「聖イグナチオ学院基金」設立の発端です。しかしながら、世界最貧国の一つに数えられる東ティモールとは容易に連絡が取れず、また新しい学校設立の進捗状況や現地の社会情勢も不確かで、誰に送金すれば確実に支援が生徒のために使われるかということもはっきりしない状況が続きました。そこで、20112月に一人のイエズス会学校の教員が現地視察のために派遣され現状を視察しました。

 新しい学校設立に先立ち、東ティモールのイエズス会は20年ほど前からディリ大司教区より聖ヨゼフ学園(高等学校/2013年閉校)を委託され運営に携わっていました。近年になって、ディリ大司教区が聖ヨゼフ学園の土地にカトリック大学を設立することになり、それに合わせて当地のイエズス会は独自の新しい学校を設立しようという計画を立案し、土地購入や教員養成等の準備を開始しました。201112月をもって聖ヨゼフ学園の運営が当地の教会に返還されることが決定されたことに伴い、イエズス会東アジア太平洋地区協議会は、イエズス会が運営する新しい中学高等学校を2013年に開校することを決定しました。
 

聖イグナチオ学院のいま

 すでに聖イグナチオ学院は20131月に開校しており、現在中学1年生から中学3年生まで271名の生徒が在学しています。2016年には引き続き高校を開校いたします。また隣接地には、高等学校教員を養成するための聖ジョアン・デ・ブリトー教育大学の設立準備が進められています。この教育大学はオーストラリア・カトリック大学と提携し単位も認められる予定で、東ティモール政府の設立認可をすでに得ており高校と同じく2016年開校を目指しています。政府から提供された土地も含め、2つの学校のために12ヘクタールあります。両校の土地取得と校舎建設費の総予算は約14億円が見込まれていますが、これらはイエズス会の各管区、様々な援助組織や篤志家の方々からの援助でまかなわれつつあります。設計と建設の会社、建築資材と熟練労働者のほぼ全てを海外に頼り、同国では自国通貨がなく米ドルを使用しているため、建設費が高くなっています。その他に学校運営経費も必要ですが、私がお世話をさせてただいている「聖イグナチオ学院基金」は、奨学金支給、教科書購入、備品文房具購入、図書館整備、教員研修など日々の学校運営に必要な教育環境(ソフト面)を整えるために用いられています。このコンテキストで、高校開校を控え理科実験室を作るプロジェクトを始めたところです。私はこの学校でadministradórと言われる副校長のような職を勤めながら、宗教・道徳科の授業を担当し、図書館設立運営や奨学金業務に携わっています。そして日曜日には、山里や海辺のチャペルにでかけミサを捧げています。 

2014年 学校の収入】中1と中2の生徒170名 *学費収入は総収入の20%。
2014年総収入$154,756.81- (学費収入$30,980.00-、イエズス会からの補助$103,008.35-、政府からの補助$300.00-、寄付金 $11,735.95、前年度からの繰越$826.81-)

2014年 学校の支出】中1と中2の生徒170名のため
2014年総支出$154,237.21- (給与$78,598.33- 生徒活動費$8,748.65- 家具・図書教科書費$16,697.95- 事務文具費$5,782.50- 自動車維持費$7,382.45- 建物維持管理費$4,819.40-等)

2015年の学費】学費を高くすると生徒が入学できなくなるので低くしています
中2と中3の生徒 年間学費US172ドル(授業料$110+諸経費)3回分割で納入
新中1の生徒 年間学費US212ドル(授業料$130+制服/体操服+諸経費)3回分割で納入 

通学してくる生徒のようす

 聖イグナチオ学院は首都ディリの西18kmに位置する海に面したリキサ県ウルメラ村カサイ集落にあり、学校周辺やディリから生徒が通学してきます。学校所在地のウルメラ村は半農半漁の寒村で、私はこの村に住んでいます。この村では生計を立てるために80%以上の家庭がごく零細な農業に従事しており、トウモロコシやキャッサバなどを育て、鶏や豚、山羊や牛を飼育しています。現金収入の多くを薪を売ることで得ています。また、わずかの家庭が小舟を持っていて、漁をしています。いずれにせよ、この地域の平均的な家族の人数は6人で、大部分の家族は一人一日2米ドル以下の収入しかなく、日々の生活必需品にも事欠いています。そして多くの住居にはトイレがなく、村には診療所のようなものもありません。公共交通機関も発達しておらず、ミクロレットというバンの超小型乗合バスを利用します。便があったとしても交通費を払うことができず、また路線は村を貫く通りにしか走っていないので、地元の生徒は歩いて学校に通っています。毎日片道3kmを歩いてやってくる生徒もいます。放課後、地元から通ってくる生徒たちは家に帰ると、水汲みや薪を用いる炊事の手伝い、兄弟姉妹の世話、家畜の餌やりなど家事を手伝っているようです。

 首都ディリからやってくる生徒たちは、トラックの荷台に立ち乗りでやってきます。生徒の親たちが自分たちで話し合いこのような通学形態になりましたが、何度か警察に止められ、「トラックは動物を運ぶもので人間を運ぶものではない」と言われたこともありました。それ以来、校長先生は理由を書いた手紙をトラックの運転手に託しています。開校当初は、運行ルートにいる子どもたちからトラックに乗っている生徒に向かって石を投げられたりしましたが、紆余曲折があり今はその子たちも聖イグナチオ学院に入学したいといっており、手を振ってくれます。ディリの街中を歩くと時折路地から「先生!」と声がかかり、こんなところからも生徒が通ってきているのかと気づかされることがあります。

 入学試験の一環として入学オリエンテーションを兼ねた「集団活動」(3次試験)が行われますが、一昨年、参加費10米ドルを払えなくて欠席した生徒がいました。家にお金がなくおじいさんに頼んだところ、女の子は学校に行かなくともよいと言われたそうです。校長先生は彼女と彼女の親に「集団活動は欠席したけれども、それはいいから奨学金制度があるので申請して学校に来なさい」と伝えました。皆様からいただいたご寄付はこのように使わせていただいています。この経験から、次の入試より学校所在地の村の受験生には3次試験の受験料を免除するとともに、奨学金制度があることを村人に周知するよう努めています。
      

聖イグナチオ学院と聖ジョアン・デ・ブリトー教育大学のミッション

毎年入学してくる中学1年生の年齢は、1114才で、日本の中1~中3にあたる年齢です。様々な理由で教育を継続して受けられなかったり、公立中学校を止めて再入学してくる生徒もいます。生徒の中には独立後の混乱のことを覚えていたり、難民生活を送った生徒もいます。中学校純就学率が25%、高校純就学率が18%2010年)のこの国では、中学高校に進学できるのは経済的に少しだけ恵まれた家庭の子どもたちです。しかし、より貧しい家庭の子どもたちが聖イグナチオ学院で学ぶことができるように実際的配慮をしています。奨学金制度もそうですが、田舎からの受験生の合格基準点も下げています。高校卒業者が必ずしも就職できない中で、また貧しい子どもたちと経済的に少しだけ恵まれた子どもたちが一緒に机を並べて学ぶ中で、学校教育はどのような役割を果たし、意義があるのかと問いその回答を見出してゆくことも私たちの学校の使命だと考えています。学校で勉強し共同生活をすることを通して、彼ら彼女たちが互いに自分の尊厳や自尊心、人間性を高め、ひいてはよりよい社会を築くための貢献ができる生徒を育てることができればと考えています。世界銀行の報告によれは、紛争後の低開発途上国において中等教育は等閑にされがちであることが指摘されています(Reshaping the Future, 2005)。そのために聖イグナチオ学院が東ティモールの中等教育のモデルスクールとなることを目指していること、聖ジョアン・デ・ブリトー教育大学が高等学校の教員養成を目的としていることは、的を得た教育プロジェクトだと確信しています。聖イグナチオ学院は、普通科(リベラル・アーツ)教育を行っています。
 

ご協力のお願い

 2012年に東ティモールに赴任し現地で働き始めると、当初の見込みとは異なる多岐にわたる支援が必要なことが分かって参りました。また、支援を受ける側の要望も解って参りました。この国の貧しく生活している子どもたちによい教育を提供するため、聖イグナチオ学院基金を現地の要請に合致するように修正しながら運営してゆきたいと考えています。 

A奨学金プログラム
 経済的に子どもたちの就学を支援するプログラムです。一口30,000円としてご協力をいただいています。支給される奨学金には、授業料、制服・体操服代、諸経費、そして学校運営補助費が含まれています。すでに現在6名の生徒に支給しており、3名の受給希望者もいます。現在約20人の生徒に、6年間奨学金を支給する資金があります。

B校舎建設費へのご寄付 *現在、図書館建築のため、ご協力を募っています
 工事は2021年まで続く予定です。多少にかかわらず、ご協力いただければ幸いです。(参考:教室一つの建築費が850万円程度 図書館の建設費が4,500万円程度)

C.学校運営費や教材費へのご寄付
 教職員の給与はイエズス会からの援助と政府からの補助で賄っているので、それ以外の教員研修費、学校備品や理科実験室教材、教科書や図書購入のための援助を必要としています。
 

イエズス会学校とは? カトリック学校とは?

 イエズス会学校とは、1540年ローマで聖イグナチオ・デ・ロヨラによって創立されたカトリック教会の男子修道会が設立母体となり、その精神を受け継いで教育を実践している学校です。日本にキリスト教を伝えた聖フランシスコ・ザビエルは、聖イグナチオがイエズス会を設立した時の同士の一人でした。日本では上智大学やエリザベト音大をはじめ、栄光学園、六甲学院、広島学院、上智福岡中高がイエズス会学校です。私立学校としてのカトリック学校は、たとえば日本では、公立学校や他の私立学校と同じように学習指導要領に則った教育をキリスト教的価値観にもとづいて行っています。またイエズス会学校もカトリック学校の一つですが、カトリック教会がいうカトリック学校は、特にすべての人びとが生きてゆくために必要な教育を受ける権利を保障することを第一の目的としています。近年カトリック教会はカトリック学校が、「一番弱い者たちに配慮する学校」であることを求めています。そのため今日、カトリック学校は世界的規模で、あらゆる宗教を信じる若者に「技術的、科学的能力によって特徴づけられる社会で生きてゆくために、必要な基本的知識を獲得するための手段」を提供できるように努めています。実際にこの目的を達成するために、「世界人権宣言」や「児童権利宣言」の実現のために努力し、またUNESCOなどの国際機関とも連携するようにとカトリック教会は広く呼びかけており、イエズス会学校もそれに応じる教育を世界各地で実践しようとしています。イエズス会学校は、Men for others(他者のために生きる人)を育成します。
 

 以上の経緯を背景として、聖イグナチオ学院基金を設立し現在に至っております。この趣旨にご賛同いただけるすべての皆様に、これらの学校で生徒が学ぶことができるようにご寄付のご協力をお願いいたします。日本国内におきましても東日本大震災の復興支援や自然災害の復旧など私共が志を向けなければならない場所はございますが、あわせて国境や民族の境界線を越えて海外にいる学ぶために支援を必要としている若者たちのためにも関心を向けていただければ幸いです。私たちは物質的に豊かな社会の中で恵まれた環境にあります。今度は、私たちが貧しく様々な困難に直面している国の若者の将来を支援できればと思います。



問合わせ・ご寄付宛先

*ご寄付をいただける場合は、ご連絡をいただけますようにお願いいたします。

■振込先            みずほ銀行 四谷支店

(宗教法人カトリックイエズス会) 東ティモール聖イグナチオ学院基金

                         ↑ (  )内は省略できます

店番号 036 口座番号 普通預金 2232164

 

■連絡先               Yoshitaka Ura (現地世話人・聖イグナチオ学院基金責任者)

                                Residencia Santo Inacio de Loyola

                                Taibesi, Cinarate, Dili, Timor Leste  P.O.Box 209 

                                tel. +67077005866(時差はありません)   e-mail: urasj@jesuits.or.jp